あなたの見栄はもうバレている。
「ロレックスどうしたんですか?」
いつものように商談に訪れたその人はいつものロレックスをしていなかった。
左手首に輝くそれが今日は見当たらない。
長年付けていたそれが無い手首はどこか寂しそうだ。
「オーバーホールに出しててね」
その人はそう言っていつも通りの商談をスタートさせた。
豊富な知識と鮮やかなセールストーク。
いつも通りの身のこなしで颯爽と商談の場を切り抜けていく。
いつも通りの完璧な商談だった。
非の打ち所は何もない。パーフェクト。
ただ僕はその時、直感的に理解していた。
「この人はもう成功していない。稼いでいるように振舞っているだけなのだ」と。
「もう売ってしまって持っていないのだ」と。
根拠があるわけではない。
でも確信に近い自信が僕にはあった。
それからしばらくしてその人の左手首にはロレックスではない時計が
何食わぬ顔で佇んでいた。
「あぁやはりロレックスは売ったんだ」
「売ったんですか?」なんて聞かずともわかる。
もう2度とロレックスが戻ってくることはなかった。
「成功しているように見せないと成功できない」という
ある種逆説的な、皮肉とも取れるような仕事はいつか破綻する。
そう感じた瞬間だった。
これだけ情報が溢れた世の中で一番やってはいけないのは
「見栄を張ること」だと最近は思う。
見栄とはつまり「嘘をつくこと」だ。
見栄を張り、自分を大きく見せないとやっていけない。
そんな仕事が長く続くはずがないのだ。
嘘はバレる。
見栄もバレる。というかバレている。
バレてる見栄ほどダサいものはない。
あらゆる業種、業界で今まで通じていた「嘘、見栄」が
通じなくなって来ている。
消費者が簡単に様々な情報にアクセスできるようになり
営業マンだけが知っている情報なんて少なくなって来た。
消費者は賢くなり、消費者優位の時代。
情報は筒抜けで「どこの何が本当に良いのか」はググればすぐにわかってしまう。
「うちの商品が1番です!」というセールストークを使って
「1番で無いことを知りながら営業するスタイル」はもう通じない。
そんなことをしてる時点でその人の信用はゼロだ。
1番じゃ無いことぐらいみんな知っている。
だから正直に
「うちの商品よりここの商品の方が良いです」と伝えなければいけないし、
「確かに商品の優位で比べると劣ります、ただ・・・・」と商品のスペックでは無い
ストーリーや背景だったり、それこそ何故自分がこれを売っているのか、何故自分はこの仕事をしているのか?という自分の価値観(考え)を伝える必要がある。
信用は積み重ねるのに膨大な時間を要するが
信用をなくすのなんて一瞬だ。
「嘘をつくこと」
「見栄を張ること」
この2つだけは絶対にやらない。
そう決めていれば信用は積み重なっていくはず。
いつの時代も嘘をつかないことが最大のブランディングだ。